飼い主の役割と自治体の役割②国や自治体の役割
豆知識
前回、災害発生時に発生時における、飼い主の役割についてお話しました。まずは飼い主がペットを守ることが前提ではありますが、とはいえ、一人ですべてを守りきることはできません。実際に災害に遭ったときには公的な補助が非常に重要となります。
今回は、都道府県・市区町村といった自治体や、国がどのような役割を担っているのかを見ていきたいと思います。
災害時における、国や自治体の役割
災害の発生時に、飼い主が自身の責任で行うペットの同行避難や適正な飼養管理ができるよう、国や自治体には平常時から、飼い主に対してペットの飼養・管理方法を普及啓発しておくことが、まず求められています。そのため、自治体によっては災害対策のガイドラインや災害時のペット救済マニュアルなどを公開しているところや、セミナーを開催しているところもあります。ぜひご自身のお住まいの自治体ではどのような活動をされているのか、日頃から調べておくことをお勧めします。
また、国は都道府県等の動物愛護管理担当部署や現地動物救護本部など、一般財団法人 ペット災害対策推進協会(略称:ペット災対協)、その他関係機関・団体と連絡・調整し、被災地での人とペットの災害対策を支援します。自治体は国と連携しながら、各地方の災害支援を行っていくこととなります。
自治体では、地方獣医師会や民間団体、企業等と災害時の協定を締結し、ペットの保護や救護活動が必要な場合に備え、各行政機関や関係団体と連携して円滑な救護活動が協働できるようにしています。さらに現地動物救護本部等の設置に向けた連携の準備や、災害の発生直後に、自治体による動物保護活動の開始が困難な場合の体制も検討し、自治体間で協力して、広域で対応する体制の整備も検討しておくことが望ましいとされています。なお、平成25年9月に施行された改正動物愛護管理法に、動物愛護推進員の活動として、災害時におけるペットの避難や保護等に関する協力が追加されました。これを踏まえ、災害時の動物愛護推進員との協力体制の構築もすすめられています。災害時にペットが行方不明になったり、怪我をしてしまったりなど救護や捜索が必要な場合には、自己判断で探し回らず、まずは自治体に相談をしてみてください。
災害が発生した際に自治体は関係機関と連携して、同行避難の推進、避難所での必要な飼養支援、放浪動物の保護や負傷動物等を救護するなどで様々な役割を担います。自治体によるこれらの活動は、被災した飼い主への支援という観点から重きを置くべきところであり、ひいては、ペットを飼養しない被災者を含む全被災者への総合的な災害対策としても重要な意味を持っています。
以下に、国や自治体がそれぞれ行う対策や、検討されるポイントについてまとめていますので、併せてお読みいただき、災害対策をご自身でも考えておいてはいかがでしょうか。
用語説明
・動物愛護推進員……動物の愛護及び適正飼育を推進するため、積極的かつ自主的な活動をしていただく地域のボランティア
・一般財団法人 ペット災害対策推進協会……緊急災害時に被災したペットの救護や円滑な救護活動の確保を目的として設置された広域組織。
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国が行う活動内容の例
平常時
- 家庭動物の適正な飼養や同行避難など、災害への備えなどに関する飼い主への普及啓発
- 自治体への災害対策や過去の事例に関する情報の提供、災害対策の支援
- 災害対策に関する関係機関等との連絡調整
災害時
- 避難所における家庭動物のためのスペースの確保、応急仮設住宅における家庭動物の受入れ、被災した家庭動物の保護、危険動物(特定動物など)の逸走対策、動物伝染病の予防など衛生管理を含めた動物の管理などについて、被災地の都道府県等と連絡調整し、被災状況や動物救護活動の状況などに関する情報を収集して提供
- 必要な際の災害現地への職員の派遣と救護支援活動の実施
- ペット災対協と連絡調整するなど、被災地の動物救護活動を支援
- 関係機関等との災害に関する連絡調整、支援の要請や調整など
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都道府県等が行う対策の例
平常時
- ペットの適正な飼養、災害への備えなどに関する飼い主への普及啓発
- ペットとの同行避難も含めた避難訓練
- 災害時のペット対策に関する連携体制の整備(災害協定、現地救護本部の体制、人材育成)
- 関係機関や団体、動物愛護推進員、他の自治体との災害時の動物救護活動に関する連携体制の整備に係る調整
- 避難所や応急仮設住宅でのペットの受入れ対策に関する、関係市区町村等との調整
- 動物救護施設を設置するための候補地の検討
- 災害時に協力が得られるボランティアリストの作成、ボランティアの育成
- 必要物資の備蓄と更新
- 動物由来感染症対策
災害時
- 危険動物の逸走などに係る対応(特定飼養施設の破損、特定動物の逸走状況などの確認、逸走時の対応など)
- 被災者と被災ペットについての情報収集
- 関係部局、国、他の自治体、地方獣医師会やペット災対協等との連絡調整やこれらへの支援要請
- 指定避難所や応急仮設住宅におけるペットとの同行避難の実態調査
- 被災地市区町村への、ペットとの避難や救護に係る指導と助言
- 避難動物、放浪動物などに関する相談窓口の設置
- 動物愛護推進員への協力の要請など
- 獣医師の派遣依頼と派遣調整
- 現地動物救護本部等の設置の検討
- 放浪動物や負傷動物の保護収容、返還や譲渡活動
- 被災住民への動物救護に関する情報の提供
- 避難に関わる情報の収集、適正な飼養の指導
- 動物由来感染症の防疫と予防
- 救援物資などの調達と保管場所の確保、輸送手段の調整と受け取り
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市区町村が行う対策の例
平常時
- ペットの適正な飼養や災害への備えなどに関する飼い主への普及啓発
- ペットとの同行避難も含めた避難訓練
- 避難所、応急仮設住宅へのペットの受入れと飼養に係る担当部局や運営担当(施設管理者など)との検討と調整、住民への周知
災害時
- ペットの同行避難者の指定避難所などへの避難誘導と支援
- 指定避難所や応急仮設住宅へのペットと同行避難者の受入れ
- 指定避難所や応急仮設住宅でのペットの飼養状況などに関する都道府県等への情報提供
- 指定避難所や応急仮設住宅でのペットの適正な飼養に係る指導と支援
- 都道府県や現地動物救護本部等が行う動物救護活動に対する支援の要請と連携協力
- 被災住民などへの動物救護や飼養支援に関する情報の提供
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出典
「人とペットの災害対策ガイドライン」(環境省) P.18-21 / P.27
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf
【平常時と災害時におけるそれぞれの役割(自治体の役割、国の役割)】を加工して作成