りく・なつ防災コラム

ペットの性格に合わせたしつけや防災対策を考えよう!②やんちゃ・わがまま・落ち着きのない子 編

防災対策

前回より、災害時に備え、ペットの性格や性質に合わせた防災対策を紹介しています。2回目の今回は、元気いっぱいなペットについて。平常時でもたまに手を焼いてしまう「やんちゃ・わがまま・落ち着きのない子」に向けたしつけや対策について解説していきます。

災害になったら大丈夫?元気すぎる「うちの子」

「ちょっと目を離すとすぐに飛び出そうとする」「要求が通らないと夜通し鳴き続ける」

活発でわがままな子が災害に遭ってしまったら、その「有り余るエネルギー」や「強い要求」が、避難生活のトラブルに繋がってしまうかもしれません。

前回お話した、神経質な子が「パニックになって隠れる」のに対し、元気な子は「パニックで逃げ出す」「退屈で騒ぎ出す」危険性があります。こうした性格を持つペットの防災対策は、「逃げ出さない」「騒がない」ための制御(コントロール)と精神的な我慢の訓練が最も重要な課題となります。

今回は、活発でわがままなペットと飼い主さんが、安全に避難生活を送るための具体的な対策について見ていきましょう。

命と安全を守る!「制御」のための徹底訓練

災害時に、興奮状態にあるペットを安全に避難させるためには、日頃から「絶対的な指示」に従う訓練が必要です。パニック状態でも飼い主さんの指示を聞き分けることが、命を守る行動に直結します。

訓練1:犬の「待て」「おいで」の絶対化

犬に特化した内容にはなりますが、飼い主の指示や命令に着実に従うことは平常時の散歩やドッグランでも求められます。他のペットや人間に迷惑をかけないためにも必要な要素となるので、少しずつでも教えていきましょう。

  • 「待て」の延長:やんちゃな犬は、特に「待て」が苦手です。遊びや食事の中で、待てる時間を少しずつ延長する訓練を徹底しましょう。この我慢が、避難所で大人しく待機できる力になります。
  • 「おいで」の徹底:逸走(逃げ出すこと)を防ぐため、どんな状況でも飼い主さんの元へ戻ってくる訓練は命綱です。おやつを使い、「戻るといいことがある」と強く覚えさせることも有効です。

訓練2:キャリーケース誘導の迅速化

活発な子は、抵抗してキャリーケースに入りたがらないことがあります。避難所へ移動するときはもちろん、避難所や車、他人の家などでもキャリーケースで大人しくするシーンはいくつも考えられますので、必ず慣らしておくことを推奨します。

以下は一般的に飼育頭数が多い、犬・猫の事例を紹介します。

  • 犬の場合:「ハウス」の指示で、興奮状態でもスムーズに入れるよう、ゲーム感覚で素早く誘導する練習をしておきましょう。
  • 猫の場合:外出が苦手だったり、抱っこから逃げようとする猫は、パニック状態になるとさらに捕まえるのが難しくなります。洗濯ネットなど目の粗いものに入れると身動きが取りにくくなり、暴れたり逃げ出したりするのを物理的に防げます。また、狭い場所は猫を落ち着かせる効果もあるので、日頃から洗濯ネットでの捕獲に慣れさせておくと、暴れながらも安全に素早く保護し、キャリーケースへ誘導するのに役立ちます。

わがまま対策のキモ!「要求鳴き・吠え」の制御と「我慢」の訓練

避難所は集団生活の場です。ペットを飼っている人ばかりではないため、同室避難が叶った場合でも「要求が通らないから騒ぐ」という行動は、他の避難者にとって最大級のトラブルになります。わがままな子の要求行動を制御する訓練は、共同生活のための必須マナーです。

1. 要求行動の無視の徹底

犬の要求吠えや、猫の要求鳴き(特に夜間)は、飼い主さんが少しでも反応するとエスカレートします。

  • 鉄則:吠えたり鳴いたりしているときは完全に無視します。静かにしているときにだけ褒めたり、要求を叶えたりしましょう。この一貫した態度が、わがままな行動を抑制します。

2. 「我慢」のトレーニングで精神的な安定を

  • 「静かに待つ」訓練:おやつやおもちゃを目の前に置き「待て」をさせる訓練を日常的に取り入れましょう。
  • 自立心を育む:活発な犬や猫でも、一人の時間、ケージやクレートの中で静かに過ごす時間が必要です。普段からすぐに相手をせず、「要求しなくても安心できる」という精神的な安定を育てることが、避難生活のストレス耐性につながります。

逸走とストレスをコントロールするための対策

活発なペットの行動で最も危険なのは、一瞬の隙をついて逃げ出してしまう「逸走」です。こちらは物理的な対策を徹底しなくてはなりません。

逸走の防止(物理的対策)

  • 犬:首輪とハーネス両方につなぐ「二重リード」の活用を強く推奨します。リードが切れる、外れることに備え、万全の対策をしておきましょう。
  • 猫:キャリーケースは必ずロックを確認し、可能であれば結束バンドやカラビナで二重ロックすると安心です。また、避難所では絶対にケージの扉を全開にしないよう徹底しましょう。

ストレスの管理(精神的対策)

  • 平時の体力消費の重要性:普段から十分な運動で体力を消費させておくことは、ストレス耐性のある体を作るために重要です。適度な疲労感は、不必要な興奮や要求吠えを抑える土台になります。
  • 避難後の運動不足対策:避難所では運動不足は避けられません。そのエネルギーを「破壊行動」や「要求行動」に向けさせないための工夫が必要です。
    • ① 知育玩具の活用避難時にも静かに集中できる知育玩具や、夢中になって遊べる電動おもちゃ・猫じゃらしを防災グッズに加えて、「頭を使った遊び」で体力を代替的に消費させましょう。
    • ② 散歩の質の向上
      避難所周辺での散歩は「運動」よりも「排泄と気分転換」が主になります。普段から短い時間でも満足できるような、集中力を高める散歩訓練(アイコンタクトや指示の徹底など)を促します。

しつけ、制御は愛情。「規律ある防災」で命を守る

活発でわがままなペットへ強い指示を出したり、命令をしたりと、厳しく叱ることで可哀想だと思ってしまうかもしれません。しかし、「しつけ」や「制御すること」は、決して理不尽な罰や怒りに因る強制ではありません。それは、災害時のパニックで逃げ出し、命の危険に晒すことを防ぐための、ペットへの最大の愛情表現であり、飼い主としての責任でもあります。

気が強くきまぐれなペットへのしつけは、手間も時間もかかるもの。今日できることから一歩一歩、二人三脚で訓練を始めてみませんか。その備えが、あなたと大切な家族であるペットの命、そして避難所での平和な共同生活を守ります。

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